リハビリテーション

4.障害学

2018年6月16日

この障害学は療法士として働く上で大変重要な内容だと考えています.障害は捉え方によっては無限にあるし,個性と捉えると存在しない言葉なのかもしれません.

しょうがいという言葉の表記方法は「障害」「障碍」「障がい」という3つがあります.最近では「障がい」と表記されることが多くなってきているように感じます.害という字が差別的であるという見解からだったと記憶しているのですが,でしたら障の字も十分差別的です.乱暴な言い方になっていますが,障害者でない人が「障がいという表記を使う私は,障がい者に対して差別的ではないよ」とアピールしているように感じてしまいます.当サイトでの表記は障害です.障害に真っ向から向き合う姿勢だからです.ご意見等あると思いますが,ご了承ください.

それではいってみましょう!!

生活することに支障をきたしているかどうか

我々療法士は,日々いろいろな方と接します.人それぞれ色々な病気,悩みをもって生きています.脳梗塞の後遺症,転倒を繰り返して圧迫骨折,人と接することが苦手なうつ病,先天的にある発達障害…本当にいろいろな疾患があります.私自身が患っていないのが不思議なくらい,たくさんの疾患があります.まず,障害かどうかを分ける基準として

生活することに支障をきたしているかどうか

というものがあります.何かしらの理由で生活がスムーズに送れず,人の手を借りなけれべならない状況は,障害があるといっていいのではないでしょうか.未成年の場合は,親に子供を育てる義務がありますし,親の手を借りることは当然の権利なので,必ずしも当てはまりません.私はスマホや財布をすぐどこかに置き忘れたりしてしまいます.そのため妻や友人の手を煩わせることが多々あります.これも十分生活に支障をきたしているし,障害だと思うのです.障害を広義の意味でとらえたら,障害を持っていない人なんていないのではないかと思います.生活に支障をきたす障害があるから,色々な道具を使用し,色々な人の協力を得て生活できているのです.私も妻がいなければ,今のような生活を送ることは絶対にできていません.なので「生活に支障をきたしているかどうか」という基準で考えると,「すべての人が障害を持ち,それをお互いに補いながら生活している」という結論に至ってしまいます.やはりこの考え方で行くと,障害と捉えるより,個性という言葉の方が適切なのかもしれません.

しかし,上の記事を読み返してみると,「自分の忘れっぽい性格は障害ではないよ!個性だよ!」と言い訳しているように感じてしまいますが,断じてそのようなことはありませんので(笑)

療法士が関わる障害の範囲

では次に我々療法士が関わる障害はどのようなものなのでしょうか?身障,精神,老年,発達,教育・・・色々な場面で活躍する療法士ですが,全ての障害に携わるわけではありません.

ここで1つ質問をします.例えば

「私,目が悪いんですけど,リハビリしてもらえますか?」

と相談されたとします.あなたはどのように回答しますか?もちろん医師の指示がなければ療法士としての業務ができないことは前提ですが,今回はそのことは省きます.
「目のリハビリは専門外なので…」
「眼科に行ってみてはどうですか?」
「視能訓練士という職業があり…」
と説明しますか?果たしてこの回答は適切でしょうか?

私であれば,まず目が悪いとはどのように悪いのか,さらに何が原因なのかを明確にしたうえで,自分の職業の対象なのかどうかを判断します.
脳梗塞による影響で半側空間無視があるのであれば高次脳機能訓練の必要があるし,外眼筋の麻痺があるのであれば促通の訓練を行う必要がある
といった具合に,目に関しても療法士ができることはあります.目のリハビリなんてしたことがないよ!という方,これは完全に勉強不足です.私も得意ではありませんので,一緒に頑張りましょう!

ではそれを踏まえてもう1つ質問です.

「僕は彼女ができないんですけど,リハビリで何とかなりますか?」

と相談されたらどのように答えますか?

一見精神面のリハビリを要求しているように感じますが,理学療法士や言語聴覚士にもできることがある可能性があります.
もし彼女ができない理由が,「歩けなくて出会いの場に行けない」のであれば理学療法士が歩行訓練をする必要があるだろうし,「言葉がうまく出ず他人とうまく話すことができない」のであれば言語聴覚士が言語訓練をする必要があります.対人関係の問題であれば,作業療法士が社会適応訓練をする必要があります.
鋭い人はここまで読めば,我々が携わる障害の範囲がわかっていることでしょう.

そう!ここで再び法律が出てくるのです.それぞれの療法士の法律を「対象者」「目的」「手段」に分けて表記します.
詳しくは
2.理学療法士(PT)と作業療法士(OT)と言語聴覚士(ST)の違いをどこよりも詳しく!!
をご参照ください.

法律に明記されている内容を【対象】【目的】【手段】に分けると

理学療法士
【対象】身体に障害のあるもの
【目的】基本的動作能力の回復
【手段】治療体操その他の運動を行わせ,および電気刺激,マッサージ,温熱その他の物理的手段を加える

作業療法士
【対象】身体的または精神的に障害のある者
【目的】応用的動作能力または社会的適応能力の回復
【手段】手芸、工芸その他の作業

言語聴覚士
【対象】言語聴覚士は音声機能,言語機能又は聴覚に障害のあるもの
【目的】その機能の維持向上
【手段】言語訓練その他の訓練,これに必要な検査及び助言,指導その他の援助を行う

となります.我々療法士の障害の範囲は対象者と手段を見ればわかります.

理学療法士が関わる障害の範囲は
身体に障害のある者の中で,基本的動作能力の低下がある人

作業療法士が関わる障害の範囲は
身体的または精神的に障害のある者の中で,応用的動作能力または社会的適応能力に低下がある人

言語聴覚士が関わる障害の範囲は
言語聴覚士は音声機能,言語機能又は聴覚に障害のあるものの中で,その機能に低下がある人

となります.本当に多くの障害がある中で、我々療法士が携わる障害の範囲はしっかり法律に明記されていました.このことからもしっかり自分の職業の定義くらいは把握するようにしましょう.

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