リハビリテーション

1.リハビリテーションとは【定義を詳しく説明します】

2018年5月26日

リハビリテーションという言葉は、「リハビリ」や「リハ」という略称で共通言語として認識され、年代を問わずほとんどの方がその意味をなんとなくでも理解している場合が多いように思います。

 

われわれ療法士にとってこれほどありがたいことはありません。自己紹介で「リハビリの担当の者です」というだけで、「あぁ、リハビリの人なのね」と理解して頂けます。

 

しかし、ここ日本ではリハビリという言葉はかなり偏った使い方をされています。我々療法士ですら、「リハビリ=機能訓練」のように思っている人が多くいます。

 

これはかなり狭い理解です。

 

この理解だとプロとしては勉強不足です。

 

さらに療法士は自分たちがまるでリハビリテーションの代表のように思っている人が多くいます。療法士はリハビリに携わる数ある職種の中の一つに過ぎず、役割もほんの一角を担っているにすぎません。

 

リハビリは療法士と患者(利用者)だけで完結するものではありません。リハビリとは我々が考えているよりも深く、広い内容を含んでいるものです。専門職として、正確にリハビリテーションのことを把握していきましょう。

 

話が少し脱線しますが、タイトルに番号がふってあることでわかると思いますが、この記事を最初にして、シリーズ物となっています。テーマはリハビリテーションに携わる上での基礎学習となっており、新人教育、復習に使えます。

 

 

この記事を書いている私は

10年以上作業療法士として働いています。

経験した分野は亜急性期、一般、回復期、療養、訪問です。

複数の学会発表経験あり。

 

本記事の流れ

  • リハビリテーションとは
  • リハビリテーションの語源
  • 小児のリハビリという矛盾
  • 世界のリハビリテーションの捉え方
  • リハビリテーションの歴史
  • リハビリテーションの定義
  • リハビリテーションの種類
  • まとめ

 

 

リハビリテーションとは

 

結論から言います。

 

リハビリテーションとは

 

「自分が所属する社会で、貢献感が感じられるために行うすべてのこと」

 

です。

 

「は?」

 

って思いましたよね。

 

大丈夫です。ちゃんと説明します。

 

リハビリテーションの言葉が持つ意味の深さ、広さ、そして意識すべき点を理解していただけると思います。

 

まずは言葉の成り立ちから理解していきましょう。

 

リハビリテーションの語源

 

rehabilitation は

re-(再び)という接頭辞と、

ラテン語のhabilis(適した、相応しい)

そして ation(にすること)

 

リハビリテーションの言葉を分けて考えると、「再び適した状態にすること」となります。

 

「再び」という言葉が入っているということは、一度獲得していた能力を「再び」取り戻すと解釈できます。

 

リハビリテーションの語源から考えると、単純で理解しやすいと思います。

 

しかし、リハビリテーションの分野には、小児(発達)分野があります。ここを考えると語源から考えるだけでは矛盾しており、無理があることがわかります。

 

小児のリハビリという矛盾

 

小児(発達)分野のリハビリでは、色々な機能向上の要素を「遊び」の中に取り入れます。

 

他の分野の方と大きく違うのは、一度獲得した能力の再獲得に向けてのリハビリではない場合があるということです。

 

うまく歩けない子や、うまく学習できない子、うまく集中できない子など色々な子がいます。

 

その子の特徴を捉え、将来を考えて目標をたて、全力で遊びます。

 

これもリハビリなんです。

 

一度も獲得したことがない能力の訓練でもリハビリなんです。

 

つまり、語源からリハビリテーションを捉えるでけでは不十分であることがわかります。

 

世界のリハビリテーションの捉え方

日本ではリハビリ=機能訓練のようにとらえられる場合が多いですが、これは誤りです。

 

専門職である我々療法士でも勘違いをしている人が非常に多くいます。

 

歴史的にも世界的にも、以下のような場合にリハビリテーションという言葉が使われてきたということをしっかりと理解しておきましょう。

 

  • 中世ヨーロッパ:戒律を犯し破門された者が、破門を解かれて名誉や地位を回復した場合
  • 無実の罪をきせられたもの(いわゆる冤罪)が、その無実が明らかになり名誉を回復した場合
  • 犯罪者が更生して社会復帰をした場合

 

以上のことから、世界ではリハビリ≠機能訓練であることがわかります。

 

リハビリテーションの歴史

リハビリテーションという言葉が医学的に使用されるようになったのは第1次世界大戦のころです。皮肉なことに戦争は医学を発展させてきた歴史があります。

 

怖い話ですが、人体実験などを行う実験体が多く手に入るからです。(現代では検体という形で死後自身の体を医学の発展のために捧げるという方法があります)

 

リハビリテーションという言葉が医学的に使用され始めたのは、1917年のアメリカ陸軍病院で、戦傷病者の社会復帰の意味で用いられたのが最初といわれています。

 

前線で戦い、負傷し、帰ってきた兵士たちを国家が恩給などで生活を支援しなければなりませんでした。そこで国家は負傷した兵士を再教育し新しい職業に就かせることができれば、国の生産性を高めることができると考えました。

 

そこから職業訓練の施設が多く作られるようになりました。時代は流れ第2次世界大戦中、アメリカ空軍の軍医でラスクHoward A.Rusk(1901-1989)は、軍病院に放置されていた多数の兵士に回復訓練をし、独立した生活を可能にさせて、さらに復職できるように支援しました。その際多数の理学療法士、作業療法士と協力し、試行錯誤しながら医学的リハビリテーションの礎を築いたと言われています。

 

このように世界では戦争をきっかけに医学が発展し、その中でリハビリテーションという言葉や考え方も確立していくのです。日本でも第2次世界大戦後、リハビリテーションの考え方が入ってくるのですが、それより以前からリハビリテーションに近い考え方があったのです。

 

日本のリハビリテーションの歴史

日本でのリハビリテーションの歴史を紐解くには3人の重要な人物を紹介せねばなりません。

 

その3人とは田代義徳(1864~1938)、柏倉松蔵(1882~1964)、高木憲次(1889~1963)です。

 

1919年,東京帝国大学整形外科に田代氏(55歳)は教授として、柏倉氏(37歳)はマッサージ師として、高木氏(30歳)は助手として在籍していました。

 

3人には「手足不自由な児童に自活の道を与えたい」という夢がありました。

 

共通の夢はありましたが、具体的な目標の違いからそれぞれ異なる道を歩むことになります.柏倉氏は小児においては集団治療が有効であると気づき、田代氏も肢体不自由児のための学校が必要であると考えていたため、柏倉氏を支援することになります。

 

1921年に、柏倉氏が肢体不自由児に教育と理学療法を施す柏学園を設立しました。これが日本で最初の肢体不自由児のための学校です。高木氏は「身体障害児をただ収容し、医学的治療をするだけでなく、職業を含めた教育を同時に行う必要がある」という考え方を提唱し、これを療育と呼びました。

 

更に高木氏は肢体不自由児施設の建設を目標に、1925年に肢節不完児福利会を設立します。田代氏は「医学の範疇を逸脱する」と批判しこれには参加しませんでした。1932年、田代氏らの尽力により東京私立光明学校が開校しました。これは日本で最初の肢体不自由児のための公立の学校です。

 

1937年7月、日露戦争が始まり、高木氏はこれを機に戦争病者の治療も行うことを掲げた肢体不自由者療護園建設委員会を設立し、企業125社から175万円の寄付を集めました。翌年の1938年。田代氏が逝去したことで、柏倉氏は最大の理解者を失うこととなります。1942年5月5日、高木は東京都板橋区に整肢療護園を開設し園長となります。21000坪という広大な敷地に、診療棟(病室・手術室など)、厚生棟(職能訓練部など)、義肢装具研究所などを建てましたが、1945年の空襲によってほぼ全壊してしまったのです。

 

田代氏・柏倉氏・高木氏の働きは日本の養護学校と肢体不自由児施設という2つの社会的な仕組みを残しました。

 

その後1947年には児童福祉法が制定され、18歳未満の身体障碍児の援護や育成がこの法律に基づいて行われるようになりました。1949年には18歳以上の身体障害者営の援助おために身体障害者福祉法が制定されました。

 

リハビリテーションという言葉が日本に入ってくる前にも、障害児や障害者の支援に関していろいろな動きがあったことが分かります。

 

そして1963年、日本初の理学療法士・作業療法士の養成校である国立リハビリテーション学院が設立されます。1965年には理学療法士及び作業療法士法が制定され、資格認定のための国家試験制度も作られ、現代に至ります。

 

 

リハビリテーションの定義

具体的にリハビリテーションという言葉がどのように定義されているかを見ていきます。

 

辞書におけるリハビリテーションの定義

辞書でどのように定義されているかを見ていきます。日本と世界で歴史や言葉の使われ方にも差があることから、「辞書も世界にものと日本のもので異なるのではないか」と仮説を立て調べ始めました。それでは見ていきましょう。

 

まずはウェブスター辞典です。ものすごく有名で、英語辞書の代名詞としても名高い辞書です。ウェブスター辞書でリハビリテーションを引くと

 

①回復作業またはその過程
②身体障害者に治療と再教育を施し、その身体的回復を図り、身体障害の範囲内で日常生活活動に参加させること
③受刑者、精神病者、災害被害者などに職業、矯正治療などの再訓練を施し、あるいは救済、財政援助、その他必要な措置を講じてその再起を促し、社会生活において有用かつ建設的な場を与えること

 

となっています。やはり「受刑者」という言葉が入っているあたり、リハビリテーションを講義の意味合いでとらえていることがわかります。また、「災害被災者の職業訓練」が記載されているところも色々と考えさせられます。

 

次は日本の辞書です。日本で辞書といったらやはり広辞苑です。それでは広辞苑でリハビリテーションを引いてみましょう。

 

治療段階を終えた疾病や外傷の後遺症を持つ人に対して、医学的・心理的な指導や機能訓練を施し、機能回復・社会復帰を図ること。更正指導。

 

となっています。やはり病気に対する機能回復をメインでとらえているような印象を受けます。仮説通り世界と日本ではリハビリテーションのとらえ方が異なるようです。では次に機関や会議でどのようにリハビリテーションを定義付けているかをみていきます。

 

リハビリテーションの世界の定義

≪世界保健機構 WHO≫(1968年)

リハビリテーションとは、「医学的・社会的・職業的・教育的手段」を併用調整し訓練あるいは再訓練によって、機能的能力が最高の可能性に達成することを目指している。

 

≪第14回世界リハビリテーション会議≫(1980年)

リハビリテーションとは障害を持った個人を援助し、可能な限りその機能を発揮させるように、そして社会の中でインテグレート(適合・適応)させるように、医学的・社会的・教育的・職業的な手段を組み合わせて実行する仮定である。

 

≪世界保健機構 WHO≫(1981年)

リハビリテーションとは能力障害あるいは社会的不利を起こす諸条件の悪影響を減少させ、障害者の社会統合を実現することを目指すあらゆる措置を含むものである。 リハビリテーションは障害者を訓練してその環境に適応させるだけでなく、障害者の直接的環境および社会全体に介入して彼らの社会統合を容易にすることも目的とする。障害者自身、その家族、そして彼らの住む地域社会はリハビリテーションに関係する諸種のサービスの計画と実施に関与しなければならない。

 

≪国連・障害者に対する世界行動計画≫(1982年)

リハビリテーションとは、身体的、精神的かつまた社会的に最も適した機能水準を可能にすることによって、各個人が自らの人生を変革していくための手段を提供していくことを目指し、かつまた時間を限定したプロセスである。

 

1968年のWHOの定義は非常にシンプルです。それに対して1981年のWHOの定義はえらく長文になっていますね。「あらゆる措置を含む」や「適応させるだけでなく」などの文章が入っているあたり、リハビリテーションの意味合いは狭くないよーって表現しているように見えます。次に日本における定義を見てみましょう。

 

リハビリテーションの日本の定義

 

≪厚生省・厚生白書≫(1965年)

リハビリテーションとは、心身に障害がある者が社会人としての生活ができるようにすることである。実際には、心身に障害のある人が社会復帰、職場への復帰、家庭への復帰あるいは学校への復帰を促進することにより、身体的、精神的、社会的、職業的にその機能を最大限に発揮させ、最も充実して生活できるようにすることを目的としている。

 

≪厚生省・厚生白書≫(1981年)

リハビリテーションとは、障害者が一人の人間として、その障害にもかかわらず、人間らしく生きることができるようにするための技術及び社会的、政策的対応に統合的体系であり、単に運動障害の機能回復の部分だけをいうのではない。

 

最初に出した厚生白書ではリハビリテーション=機能回復と誤解されがちな部分を、1981年に出したほうでは「機能回復の部分を言うのだけではない」とはっきりと記載することで、これまでのリハビリテーションの使い方を修正しようとした意図がくみ取れます。

 

次にリハビリテーションの種類(4つの側面)についてです。療法士の中には自分たちがまるでリハビリテーションの代表のように思っている人がいますが、療法士はリハビリに携わる数ある職種の中の一つに過ぎず、役割もほんの一角を担っているにすぎません。それでは見てみましょう。

 

リハビリテーションの種類

 

リハビリテーションには4つの側面があります。それは、

 

  1. 医学的リハビリテーション
  2. 社会的リハビリテーション
  3. 教育的リハビリテーション
  4. 職業的リハビリテーション

です。それぞれの側面を具体的に述べていきます。

1.医学的リハビリテーション
【目的】疾病に起因する心身の障害に対する治療、指導、援助
【職種】リハ医、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療相談員、介護福祉士、技師装具士など

 

2.社会的リハビリテーション
【目的】機能回復と環境の改善によって社会生活力を高めることを目的としたプロセス
【職種】社会福祉士、介護福祉士、建築家など

 

3.教育的リハビリテーション
【目的】心身の障害を持つ児(者)に対しての特殊教育。盲、聾、特別支援学校などでの教育
【職種】特殊教育の教員免許を持つもの

 

4.職業的リハビリテーション
【目的】障害者が適当な職業につき、または継続し、社会への(再)統合を促進する
【職種】職業カウンセラー、ジョブコーチなど

 

このようにリハビリテーションには4つの側面があり、色々な目的、色々な職業が関わっていることがわかります。リハビリテーション=療法士ではなく、療法士はリハビリテーションの一角を担っているに過ぎないことを忘れないようにしましょう。

まとめ

 

ここまで読んでいただいた方には、リハビリテーションの保つ意味の広さ、深さをわかっていただけたかと思います。

 

ここからは私の経験を踏まえ、たどり着いているリハビリテーションの結論です。

 

私は個人的に「機能訓練をして歩けるようになる」という目標は短期目標としてはOKと思います。

 

長期目標でよくあがるのは「安全・安心の生活」ですが、この言葉は本質を捉えていないと思います。

 

何を持って安心・安心と考えるか、、、

 

あなたは何を持って安心・安全を感じますか?

 

転倒する可能性が減ったから?

 

誰かに守ってもらえているから?

 

経済的に安定しているから?

 

社会的なサービスを固めて、孤独死の可能性が減ったから?

 

なんだか違うと思いませんか?

 

わたしは長期目標としては

 

「自分が所属する社会で、貢献感を感じることができる」

 

です。ここについては10.社会的適応の定義と評価と治療を参照にされてください。

 

わたしは、すべてリハビリテーションの長期目標は上記が当てはまるのではないかと考え得ています。

 

ちなみに最終目標は自分自身の葬式を想定して、だれかに自分に向けた弔事を読んでもらうとし、なんと言ってもらいたいか。

 

それがそのまま最終目標になると考えています。

 

つまり最終目標は、死ぬときのことに視点を向けます。

 

話を戻します。

 

リハビリテーションの長期目標は

 

「自分が所属する社会で、貢献感を感じることができる」

 

です。

 

そこで私が考えるリハビリテーションの定義は

 

「自分が所属する社会で、貢献感を感じるために行うすべてのこと」

 

と捉えることができると私は考えています。

 

この記事だけでは理解が難しいかもしれません。

 

ぜひ10.社会的適応能力の定義と評価と治療も合わせて読んでください。

 

この記事はこれで終わりです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

→次に進む(2.理学学療法士と作業療法士と言語聴覚士の違い【どこよりも詳しく

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