リハビリテーション

9.日常生活動作(ADL)と手段的日常生活動作(IADL)と生活関連動作(APDL)の違いをどこよりも詳しく!!

2018年12月12日

今回は日常生活動作と手段的日常生活動作の違いについて述べていきます.

それではいってみましょう!!

日常生活動作について

日本リハビリテーション医学会評価基準委員会は日常生活動作の定義を

「日常生活動作は、ひとりの人間が独立して生活するために行う基本的な、しかも各人ともに共通に毎日繰り返される一連の身体動作群をいう」

 

としています.

各人ともに共通に毎日繰り返される

ここはとても重要な文面です.今でもどこまでが日常生活動作なのかといわれると,よくわからないのです.爪切りは人間にとって必要だけど,毎日はしないことが多いし人によるし,コンタクトレンズの着け外しは毎日必要だけど人によっては必要のない動作です.

日常生活動作の言葉を素直に受け止めると,“日常の生活で行う動作”となるので,人によってそれぞれ動作が異なることになります.

また日常生活動作の評価として有名なものにFIMがあります.

FIMは1980年代に米国のリハビリテーション医学会の後援を受け,発足した作業部会が開発したものです.最初にFIMを学んだときに一番驚いたのは,清拭の項目に背部・頭部が含まれていないことでした.「なぜ背部や頭部が含まれていないのか?」という問い合わせは多数あったとのことです.米国によると,「普通の人でも洗えないことがあるから」とのこと

・・・?
そういうものなんでしょうか?
米国では太ってる人が多いから?
背中や頭を毎日洗うのが普通なのは日本人の価値観なのでしょうか?

とにかくFIMは背中が洗えなくても満点になりえるのです.

そもそもFIMはADLを網羅するための評価ではありません.人それぞれのADLを数量化し,スタッフ間で共有するための評価様式です.なので当然FIMでADL評価を網羅することはできません.つまりFIMが満点になっても自宅で生活できるとは限らないのです.

それを知ったときにADL評価を網羅するような評価様式を探したのですが,見つけられませんでした.

なかったら作ればいい!

ということで,私のこれまでの経験,さらにこれまで関わったあらゆる経験年数の作業療法士や理学療法士,看護師などの協力を得て,まずはADLの評価の視点をひたすら列挙し,さらに後に出てくるIADLやAPDLなどの視点もすべてを含めた,作業療法士の応用的動作に対する視点の集大成となる評価用紙を作成しました.

そのひとつひとつの視点を     で述べていますので,ぜひ参考にされてください.

FIMが浸透したこともあって,食事・整容・更衣・排泄・入浴は5大ADLとして大変有名になりました.しかしADLは細分化すれば無限にあるし,人によって必要・不必要が分かれると考えております.その人の生活スタイルを明確に把握し,必要なADLに気付くスキル・ノウハウを身につけていきましょう.

特に男性諸君!

女性特有の化粧や髪の結び方,生理用品を扱う動作手順わかりますか?

男性特有の髭剃りなどは女性でも大抵わかりますが,男性は女性特有のADL動作に疎いものです.男性OTの場合,その点もしっかりと把握すべきです.FIMを見たってわかりません.これも10.検査・測定・評価のADL評価のページにアップしますので,しっかりと学んでいきましょう.

ADLに似た言葉に,IADLやAPDLという言葉がありますので,最後にそれぞれの違いを勉強して終わりましょう.

IADLについて

IADL(Instrumental Activities of Daily Living)は手段的日常生活動作と訳されます.IADLは

・電話の使い方
・買い物
・食事の支度
・家事
・洗濯
・移動,外出
・内服管理
・金銭管理

の8項目に分かれるとされています.

APDLについて

APDL(Activities Parallel to Daily Living)は生活関連動作の略です.家庭生活を維持するのに必要な,家事動作を中心とした生活動作能力とされており,

・調理
・掃除
・買い物
・公共交通機関の利用

が項目として挙げられています.

これまで基本的動作,応用的動作,日常生活動作,手段的日常生活動作,生活関連動作の違いを述べてきてきたのですが,「ここまでが日常生活動作でここからが手段的日常生活動作」なんて線引きをすることにまったく意味がないと考えております.なぜなら,その人によって必要な動作は異なり,その人によって動作の優先順位や価値観が違うからです.

「個別必要動作」

という言葉をご存知ですか?

知るわけないですよね.なぜならこの記事を書きながら勉強している最中に,筆者が勝手に作った言葉だからです(笑).今回,言葉の違いを調べれば調べるほど,意味がないのではと思うようになりました.医学ではありがちですが,人間の体や専門を,内科・外科・整形…などのように細かく細かく区別化していく傾向にあります.もちろん専門をわけ,より深く学ぶことも必要ですが,それで人間全体が見えなくなると本末転倒です.特に作業療法士は人間全体,さらにはその人間を取り巻く環境にも視点を向けなければなりません.把握すべきは動作が付く言葉それぞれの違いではなく,その人にとって必要な動作がなにかということです.つまり「個別必要動作」というわけです.

とはいえ,理学療法士・作業療法士法の中にも基本的動作・応用的動作という言葉が明記されているので,職種の説明をする際には必要なので,ザックリでいいですので,言葉の違いも頭の片隅に入れておきましょう.

 

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