リハビリテーション

2.理学療法士(PT)と作業療法士(OT)と言語聴覚士(ST)の違い【どこよりも詳しく】

2018年6月2日

大学や専門学校で習った理学療法士と作業療法士と言語聴覚士の違い。

 

わかっているようでわかっていないことが多いです。

 

初めて臨床に出て、習っとこととのギャップを感じることもあるでしょう。

 

患者さん、利用者さんから「何が違うの?」と問われ、意外と戸惑いませんでしたか?

 

理解できていても、簡単に説明することは難しいんです。

 

この記事を読むことで、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の違いを根本から学び、その違いを正確に理解し、周りの人に簡単に説明できるようになります。

 

それではいってみましょう。

 

この記事を書いている私は

10年以上作業療法士として働いています。

経験した分野は亜急性期、一般、回復期、療養、訪問です。

複数の学会発表経験あり。

 

本記事の流れ

  • 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の違い
  • 理学療法士について
  • 作業療法士について
  • 言語聴覚士について
  • 世界の定義
  • まとめ

 

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の違い

 

今回も結論からいいます。それぞれの職種の違いは

専門的には

理学療法士は
【対象】身体に障害のあるもの
【目的】基本的動作能力の回復
【手段】治療体操その他の運動を行わせ,および電気刺激,マッサージ,温熱その他の物理的手段を加える

 

作業療法士は
【対象者】身体的または精神的に障害のある者
【目的】応用的動作能力または社会的適応能力の回復
【手段】手芸、工芸その他の作業

 

言語聴覚士は
【対象者】言語聴覚士は音声機能,言語機能又は聴覚に障害のあるもの
【目的】その機能の維持向上
【手段】言語訓練その他の訓練,これに必要な検査及び助言,指導その他の援助を行う

です。

 

これを一般の方向けに分かりやすくいうと

理学療法士は「筋トレなどを通して、立つ・歩くなどの基本的なことに対するリハビリをする人です」

 

作業療法士は「理学療法士が鍛えた基本的な能力を生かして、お風呂やトイレ動作など生活するために必要な応用的な動作をリハビリする人。また、理学療法士と大きく異なることとして、精神疾患の人に対するリハビリを担うことがあります」

 

言語聴覚士は「他の2職種とはやや毛色が異なり、飲み込みや言葉に対するリハビリをします。また聴覚の分野も学び、耳鼻科に務める人もいます」

 

私は上記のように説明することが多いです。

 

一般の方でもそれぞれの職種の違いを知っている方も増えてきているので、その場合は定義に近い、もっと深く掘り下げた説明をすることもあります。

 

専門職としては自分の法律くらいは暗記するくらいの状態でいるべきです。

 

下の記事より、しっかり復習しましょう。

 

理学療法士について

 

3職種の中でも理学療法士はリハビリの花形のような印象です。リハビリと聞いたら、モビライゼーションや運動療法、平行棒で歩行訓練をしている姿を思い浮かべる人が多いと思います。

 

作業療法士の私から見てもなんかカッコいいなぁと思います。では理学療法士の日本の定義です。

 

【理学療法士・作業療法士法 1965年】
理学療法士とは、身体に障害のある者に対して、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行わせ、および電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう

 

これをわかりやすくするために、【対象】【目的】【手段】に分けて考えてみましょう。

理学療法士は
【対象】身体に障害のあるもの
【目的】基本的動作能力の回復
【手段】治療体操その他の運動を行わせ,および電気刺激,マッサージ,温熱その他の物理的手段を加える

となります。

法律を参考に理学療法士を説明すると

「理学療法士は身体に障害のある方に対し、基本的動作能力のリハビリを行う専門家です」

となるのです。

 

基本的動作能力については基本的動作と応用的動作の違いをどこよりも詳しく!!を参考にされてください。

 

理学療法士の手段についてもう少し詳しく解説します。

理学療法士の手段は「治療体操その他の運動を行わせ、および電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加える」と記載されていますが、大きくは「運動療法」と「物理療法」に分かれます。具体的には

【運動療法】
運動障害(関節可動域訓練、筋力増強訓練、持久力訓練、基本的動作訓練、神経筋促通 等)
内部障害(低負荷高頻度の運動、有酸素運動 等)

【物理療法】
温熱、寒冷、光線、水圧、電気刺激 等の物理的な力を使用した療法

となります。いや~改めてみると理学療法士の定義ってわかりやすくて本当にいですよね!作業療法士の定義なんて…まぁそれは後程見てみましょう。

ちなみに理学療法士は英語でphysical therapist(フィジカル セラピスト)ですね。physicalには「身体的」もしくは「物理的」の意味合いがあります。その点からも理学療法士の役割は理解しやすいですね。

作業療法士について

 

作業療法士は机上でパズルをしていたり、一緒にレクリエーションをしていたり「何をしているかわからない」「遊んでいるだけじゃないの?」と思われることがありますが、そんなことはありません。対象者にとって必要な動作を評価し、綿密な計画のもとリハビリをしています。

 

作業療法士が誤解を受けるのは法律の曖昧さの影響もあるかもしれません。

 

【理学療法士・作業療法士法 1965年】
作業療法士とは、身体的または精神的に障害のある者に対して、主としてその応用的動作能力または社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工芸その他の作業を行わせることをいう

こちらも【対象】【目的】【手段】に分けてみましょう。

 

【対象者】身体的または精神的に障害のある者
【目的】応用的動作能力または社会的適応能力の回復
【手段】手芸、工芸その他の作業

 

理学療法士の定義と比較し、まず明確に違うのが【対象】に精神的に障害のある者が含まれていることです。

 

「理学療法士は精神疾患の方のリハビリをすることができない」と捉えられがちですが、これは少し違います。

 

主治医が発行する指示書によります.内科医が理学療法士に対して指示書を発行する際,診断名が脳梗塞後遺症で,併発してうつ病があったとしても,理学療法士はそのままリハビリを行うことができます。

 

しかし、精神科医や心療内科医がうつ病を診断名として、理学療法士に指示書を発行することはできません。

 

「メインとなる疾患が精神疾患であれば理学療法士はリハビリをすることができない」というのが正確な理解です。

 

精神科の病院にも理学療法士が在籍していることがあります。精神科でも脳梗塞後遺症や骨折などで理学療法士が得意とする運動療法や物理療法が必要とされているからです。

 

これは精神科にも内科医などの他の科の医師が在籍しており、精神的な疾患がメインではなく、身体的な疾患をメインとした診断名で指示書が出ていることで理学療法士がリハビリできるように工夫しているのです。

 

応用的動作能力については、基本的動作と応用的動作の違いをどこよりも詳しく!!の記事を参考にされてください。

 

社会的適応能力については、社会的適応能力の定義と評価記事を参考にされてください.

 

さて、問題は【手段】です。手芸、工芸その他の作業って……( ゚Д゚)

 

あまりに曖昧で誤解を生む可能性があることに危機感を感じているのか、作業療法士協会側も動き始めています。

 

2016年11月29日に開催された「リハビリテーションを考える議員連盟 第3回総会」にて日本作業療法士協会の中村春基会長は

「作業療法は医療現場において手芸、工作を行わせることといった認識が広がっている。現状は就労支援、住環境整備、発達障害や高次脳機能等に対するリハビリテーションも実施されており、法律に明記されている内容から誤解が生じている」と述べ、理学療法士及び作業療法士法の改定を要望したのです。

 

このことから、日本の作業療法の定義もそう遠くないうちに変わる日が来るかもしれません。

 

言語聴覚士について

 

言語聴覚士は、理学療法士・作業療法士と比較するとどこか異質な存在に感じます。

 

言語聴覚室で訓練しているため、何をしているのかわかりにくかったり、VF(嚥下造影検査)に立ち会ったりなど他の2職種とはちょっと違います。

 

私の感覚では、この言語聴覚士という仕事は、今後さらに深刻さを増す高齢化に対し、非常に重要な役割になってくる職業であると思っています。

 

医科歯科連携などでは、口から食べることの重要性、適切な入れ歯を装着し続けることの重要性、フレイルやサルコペニアといった概念の重要性を強く訴えています。

 

その中で言語聴覚士は非常に重要なポジションです。しかしその分勉強はめちゃめちゃ難しい印象があります。訪問の分野にいると嚥下評価も理学療法士や作業療法士が行うこともありますが、もっと言語聴覚士の人と繋がり、勉強をしていればよかったと後悔するほどです。それほどに言語、嚥下は難しく、かつ重要です。

 

言語聴覚士は理学療法士や作業療法士に比べて新しくできた職業です。言語聴覚士が日本で国家資格化するまでの歴史を見てみましょう。

 

1960年にWHOの顧問だったパーマー教授が来日し、言語聴覚士養成にあたり、ASHA(The American Speech and Hearing Association;米国言語聴覚学会)の規定に準じた基準を採択すべきと勧告しました。

 

しかしそこから1997年の言語聴覚士法制定まで37年の歳月がかかっています。この間、厚生省が出した法案がASHA基準とズレがあったり、ST(言語士)とAT(聴覚士)に分けて検討されることがあったり、言語聴覚士に平衡機能に対する業務を入れる案があったりと紆余曲折して、言語聴覚士は国家資格化しました。

国家資格化するにはこれほどまでの時間が必要なものなのでしょうか?
その紆余曲折の末できた定義がこれです。

 

【言語聴覚士法 1997年】
言語聴覚士は音声機能、言語機能又は聴覚に障害のあるものについてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを生業とする者

 

これを【対象者】【目的】【手段】にまとめると

 

【対象者】言語聴覚士は音声機能,言語機能又は聴覚に障害のあるもの
【目的】その機能の維持向上
【手段】言語訓練その他の訓練,これに必要な検査及び助言,指導その他の援助を行う

 

となります。結局平衡機能に対する業務は含まれなかったんですね。それにしても言語聴覚士が認定されてから、まだ20年程しか経っていないんですね。

 

私としては今後VFなどの検査がない在宅の分野でもある程度の嚥下や言語の評価ができるようなノウハウとスキルを身につけたいと考えています。

 

日本の定義が理解出来たところで、参考までに世界の定義を見てみましょう。

 

世界の定義

 

理学療法士の世界の定義

【世界理学療法連盟(WCPT;Worldconfederation of Physical Therapy)1982年】
理学療法とは、身体的治療の技術および科学であり、運動療法、教育指導、温熱、寒冷、光線、水、マッサージ、及び電気を治療手段とする。治療目的の中に痛みの緩和、循環の増加、障害(disability)の予防と改善、力、協調性の最大回復がある。理学療法は、また神経支配と筋の障害(impairment)程度の決定をするための電気的・徒手的テスト、機能的能力を決定するためのテスト、関節可動域の測定、肺活量の測定を医師の診断補助として、また経過を記録する目的として行うことも含む。理学療法は障害(disability)を予防し病人及び障害者(handicapped)を社会復帰(rehabilitate)させるために働くとともに、予防医学においても活動的であり、また臨床研究も行う。

 

WCPTの理学療法の定義はいろいろなことが割と具体的に書いている特徴があります。簡潔に【対象者】【目的】【手段】にまとめると

 

【対象者】病人及び障害者
【目的】痛みの緩和、循環の増加、障害(disability)の予防と改善、力、協調性の最大回復
【手段】運動療法、教育指導、温熱、寒冷、光線、水、マッサージ、及び電気

 

となります。多少見やすくなったでしょうか?日本の定義に比べ目的や手段はかなり具体的に定義されています。次に各国の定義です。

 

【アメリカ 理学療法業務の概念】
理学療法は、ヘルス・ケアのプロフェッションであり、病院、クリニック、ナーシングホーム、開業等の場で行われる。理学療法士は、病気、けが、事故、先天性障害等によって障害を持つ患者に働きかける。理学療法士は神経筋系、骨格筋系、感覚運動系、そして心肺機能の評価を行う。理学療法士は患者の主治医である医師または歯科医師の依頼を受けて、テストの結果に基づいて初期、長期の治療計画を立てる。さらに理学療法士は患者に動機づけをし、患者と家族への指導と回復期に関係する他の医療機関への指導を行う。

 

【イギリスの定義】
理学療法とは、疾病と障害の予防と治療並びに日常生活動作を含む機能の発達と回復を図るために、物理的手段を使い、リハビリテーションの過程を援助することである。

 

【フランスの定義】
理学療法は運動(動作)のための治療である

 

【ドイツの定義】
運動療法と物理療法を用いて、病気の治療の改善および予防の分野で用いられる医療や言的治療の代替または有用な補助手段である

 

いやいやフランスめっちゃシンプルですやん( ゚Д゚)国によって全然違うものですね。

 

作業療法士の世界の定義

 

【世界作業療法士連盟(WFOT;World Federation of Occupational Therapists)1984年 】
作業療法とは、一時的であるか恒久的であるかを問わず、身体的または精神的に機能障害、能力不全、もしくは社会的不利にある人々に関与する保健の分野である。専門的な資格を持った作業療法士はそうした人々への職業的、社会的、個人的及び家庭環境のニードを満たし、また生活に最大限に参加することを援助する目的で、機能の回復や機能を最大限に生かすために計画された種々の作業活動に患者を参加させることである。

 

例によって【対象者】【目的】【手段】に分けると以下のようになります。

 

【対象者】身体的または精神的に機能障害、能力不全、もしくは社会的不利にある人々
【目的】職業的、社会的、個人的及び家庭環境のニードを満たし、また生活に最大限に参加することを援助する
【手段】種々の作業活動に患者を参加させる

 

やっぱり手段は曖昧です。作業療法士は色々な可能性を含んでいるため、多少曖昧にさせておく必要があるのはわかるのですが、もう少し具体的でもいい気がします。

次に各国の定義です。

 

【カナダの定義】
作業療法とは、作業を通して日常生 活行うことを可能にする技術と学問である。健康を促進する作業を人々が行うことを可能にし、公正で全てを包み込むような社会を実現すれば、すべての人が人生の日常の作業において、 自らの潜在力を使って参加することができる

 

……すみませんm(_ _)mほかの国の定義も探したのですが、発見できず……見つかり次第掲載します。

 

作業療法士の定義って、定義というよりもなんだか理念のように感じてしまいます。

 

 

言語聴覚士についても見つけきれなかったので、見つかり次第掲載したいと思います。

 

まとめ

 

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の定義について学んできました。最後にそれぞれの日本の定義を比較して、各職種の特徴を明確に把握しておきましょう。

 

理学療法士
【対象者】身体に障害のあるもの
【目的】基本的動作能力の回復
【手段】治療体操その他の運動を行わせ、および電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加える

 

作業療法士
【対象者】身体的または精神的に障害のある者
【目的】応用的動作能力または社会的適応能力の回復
【手段】手芸、工芸その他の作業

 

言語聴覚士
【対象者】言語聴覚士は音声機能、言語機能又は聴覚に障害のあるもの
【目的】その機能の維持向上
【手段】言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行う

 

せめて自分の職業の定義くらいは暗記し、各職種の違いも何となくでもいいので把握しておくといいでしょう。「法律上は~違いがあるんですけど、実際の現場では~のように役割分担していたりします」とかって説明すると「おぉ!しっかり勉強してるネ!」と思わせることができるかもしれません。

 

私の場合、自分の職業を好きでありたいし、自分の職業のことをしっかりと理解しておく必要があると感じ、作業療法士の日本の定義くらいは暗記しています。意外と話のネタになりますよ!

 

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